しゃちょーインタビュー

「壁」をなくし、多様な価値観と出逢う場所をつくりたい

「自分は何がやりたいのだろう?」と日々悶々としながら会社に通勤していたり、
「どうしたら社員のモチベーションが高まるのだろう?」と多くの経営者が悩んでいたり、
「山積する世の中の問題に対して何かできたら」と思うのに、それどころではなかったり。

 

生きること、働くこと、社会と関わることに関して、誰もが何らかの課題や「やりにくさ」を抱えています。けれども、人との出逢い、多様な価値観との出逢いがあれば、様々な選択肢があることに気づき、夢や目標をあきらめることなく、可能性のとびらを開くことができるのではないか。

 

「夢びと」が提供するのは、そのような人生の可能性を開く出逢いの場であり、学びの場です。

 

「人が成長したり、変わっていくのを見るのが好きなんですよね」と話す、当社代表・中田俊。
「夢びと」へ込める思い、これまでの経緯などについて紹介します。

中田俊プロフィール
1979年大阪生まれ。京都育ち。大学中退後、目標もなく過ごしていた弁当配達アルバイト時代に税理士という職業を知り、一念発起して28歳で税理士に。32歳で独立。税理士事務所のほか、2015年12月株式会社夢びとを設立。人を大切にした経営や社会貢献を行う企業、NPOやNGOを、様々な人とつなぎ、学びの場を創造する事業を展開している。写真はザンビア訪問時の中田(左)。

多様な出逢いを提供する当社の活動

さて、中田のことを説明する前に、当社が何を行っている会社か簡単に紹介したいと思います。ひとつ目が「人が輝く会社づくり実践塾」です。

 

「人と経営研究所」所長の大久保寛司さんをメイン講師に、それ以外の回は毎回異なるゲスト講師を招いて講演会を開いています。ゲスト講師をお願いするのは、人を大切にした経営を心がけ、社会貢献に積極的な全国の中小企業の経営者や、熱い想いと事業性を持って社会課題の解決に取り組むNPO・NGOの代表など。

 

これまでに、鎌倉投信株式会社の新井和宏さん、株式会社Silent Voiceの尾中友哉さん、株式会社和えるの矢島里佳さんなど、社会課題に対して新しい価値を世の中に提案している起業家にお越しいただきました。

「人が輝く会社づくり実践塾」の様子。この時のゲストはカンボジアで女性支援を行うNPO法人グローブ・ジャングルの加藤南美さん

もうひとつは、「いい会社訪問勉強会」です。その名の通り、全国の素敵な会社を訪問し、考え方や現場での取り組みを体感する勉強会で、年に2〜3回の緩やかなペースで行っています。

 

さらにこのような活動を通して、夢びとではほかにも色々な企画が生まれています。「自らやってみる」「体験する」を重視する夢びとでは、普通に働いているとなかなかできない体験ができることも多いのです。

 

例えば2017年に実施したのは、兵庫県・淡路島での農業体験。完全無農薬・無肥料、自然の力だけで農作物を育てる「ありがとう農法」を通して、いのちや心の教育を行っている「一般社団法人大地が教えてくれたこと」と共創しました。

 

(中田)「社員や顧客企業、家族も交えて月1回、半年間、農業を体験しに出かけました。夜はお楽しみのバーベキュー。大地の恵みだけで育った力強い野菜を、みんなで囲んで食べるんです。そうすると、明らかにみんな、会社にいる時と表情が違うんですよね。だんだん自分らしさみたいなものが出てくる。因果関係は証明できないけど、そこに通っていた社員の結婚が決まったとか、人生が開かれていくこともあったりして。そういう変化を見るのがすごく好きで」。

 

さらにユニークなのは、自社の経営。夢びとでは、社員がやりたいことを見つけたり、目標実現のために必要な時間を確保したりするための休暇を2ヵ月間も認める「家出制度」があります。また、仕事以外のプライベートなことも含め、興味・関心や将来の夢などを語る「毎朝1時間の朝礼」、社員全員で、どんな生き方・働き方をしたいのかを半年かけて話し合い、明文化する「ミッションステートメントの作成」など、社員が自ら生き方・働き方を見つけ、仕事と結びつけていく方法を、常に探求することができるのです。

 

(中田)「こういう取組みをはじめて3年近く経ちました。就業時間内に行っています。仕事の総量は変わっていないのですが、残業する時間はどんどん減っていき、今は仕事できる時間もどんどん減っています(笑)。人間の成長や可能性ってすごいと思いますね」。

淡路島での「ありがとう農法」研修時の社員。

人生を変えた「いい会社」との出逢い

このように、社員や顧客企業、取引先など垣根なく、様々な出逢いの機会を提供しているのが「夢びと」。どうしてそのような会社を作っているのか、そのきっかけは、中田自身が税理士として独立するまでの出逢いにありました。

 

(中田)「そもそも僕は20代の頃は、将来の目標も何もなく、無為に過ごしていた若者でした。小学校高学年から塾通い、高校まで勉強漬けの日々。それが大学受験に失敗して予備校に入ると遊びを覚えてしまい、一浪して大学には入ったものの、大学にはちっとも行かず、単位が足りずに中退しました」。

 

仕送りも止められた中田は、食べることに困らないという理由で、弁当配達のアルバイトを始めます。その頃は、周囲の友人たちが会社に就職していく中、「サラリーマンには絶対ならへん」と思っていたそうです。

 

(中田)「世の中、『働くのは大変だ』という雰囲気が蔓延しているじゃないですか。そういう世の中の雰囲気をそのまま素直に受けていたんですよね。働く前から『働くのは嫌、サラリーマンってしんどそうやな』と。そうはいってもたいていの若者は就職するんだけど、僕はそういうレールに乗ることさえ拒んでいました。拒んでいたというか、就職しようとしても、復学して卒業するのに何年もかかるので…」。

 

そんな中田は、アルバイト先の顧問税理士を通し、税理士という職業を知ります。

 

(中田)「税理士にピンと来たというより、当時は何もしていなかったので、サラリーマンになること以外で、転がってきたものはつかもうという環境にいたのかもしれないですね」。

 

そこから税理士を目指して勉強。京都の税理士事務所に就職し、仕事と資格の勉強をする2足のわらじ生活がスタートします。この頃、事務所の社長の勧めで、年間200冊ほどの本を読むようになった中田は、人生を変えた一冊『日本でいちばん大切にしたい会社』(坂本光司著)と出逢うのです。

 

(中田)「本の中には、会社の理念を大切に、従業員、取引先、顧客など、関わる全ての人を大切にし、幸せにする経営者が紹介されていました。『税理士として、関係者全ての人を幸せにする会社を応援したい』という気持ちが湧き上がりました」。

 

28歳で試験に合格、晴れて税理士になり目標も見つけた中田ですが、現実はトントン拍子にはいかないもの。税理士事務所で任されるクライアントの中には、「従業員の給料よりも、自分の報酬を上げる節税策を考えてほしい」という経営者など、自己中心的だと感じる人は少なくありませんでした。

 

(中田)「会社は継続しながら様々な価値を生み出しますが、当時は自分の視野が狭く、経営者のそういった一面だけを見て判断し、『何のために税理士になったのか』と嫌になってしまったんですね」。

 

そこで中田は、『日本でいちばん大切にしたい会社』で紹介されていた企業を、自分の目で確かめに行く旅に出ます。最初に訪れたのは、障害者雇用80%を達成しているチョークメーカー。そこには、「本に書かれていた以上の理想の経営が目の前にあった」と中田はいいます。

 

(中田)「税理士として、このような経営者を応援し、育成したいと、目標が定まりました」。

 

その後、中田は、独立を決意してから本格的に営業を開始するまで、銀行から500万円の借入をして、全国の色々な会社・経営者を訪問してまわりました。

 

(中田)「銀行から借入をする経営者も多いので、その経験を自分でもやってみようと思ったんです。それに、独立と意気込んでみたはいいものの、顧客はまだ一人もいない。『あれ?どうしようかな?どういう経営をすれば軌道に乗るんだろう?』って感じで、その時初めて、現実を知ったというか。自分では解決のしようがないので、いろいろな経営者に聞きに行ってみようと思ったんです」。

 

約1年半かけて全国を訪ね歩き、会った経営者は200人以上。この出逢いが中田を大きく変えることになりました。

 

(中田)「自分が理想とする経営者の共通点は何なのか、どういう経営をしたら業績が上がっていくのか、帰りの新幹線の中でいつも反芻していました。そうして気づいたことは、いい会社の経営者は、従業員、取引先、顧客など、関わる全ての人の『幸せ』を心から応援しているということ。世の中にはCS(顧客満足)、ES(従業員満足)という言葉があるけれど、そういう特定の誰かではないんですよね。僕も、『表裏なく、うちの会社に関わる人すべてが幸せになるにはどうすればいいかを考えて動こう』って、そのために最低限必要なことをまずは淡々とやると決めたんです」。

 

組織を超えて交じり合ったり協力したりする関係を

そうして2012年、税理士事務所の営業をスタート。表裏なくすべての人を大切にする経営は顧客に支持され、順調に軌道に乗っていきました。と同時に、「いい会社」の成功事例をたくさん知る中田は、自然な結果として、顧客である経営者にも、それを知る機会を提供したいと考えるようになったのです。

 

(中田)「『こういうことやりたい』と夢を語る経営者は多いけれども、いざそれに向かって動き始めるかというと、『業績が厳しいから…』とあきらめてしまう人の方が圧倒的に多いんですよね。でも、僕が知っているいい会社では、夢と業績の両方を実現しています。例えば、バナナペーパーなど環境に配慮した紙で名刺を作る丸吉日新堂印刷株式会社さんとか。夢を追いかけてもビジネスは回っていくという事例を、たくさんの経営者に知ってほしいんですよね」

 

そうした思いから、一般的な税理士業とは別に、社会貢献型企業との協働イベントや、いい会社訪問見学会をスタート。その事業の拡大に伴い、2015年12月、「株式会社夢びと」が誕生しました。

 

ところで、夢びとを運営する中で、中田自身にも変化がありました。カンボジアで貧困支援・女性支援をするNPO法人グローブ・ジャングルと出逢ったり、バナナペーパーの生産地・ザンビア訪問したりしたことがきっかけで、日本だけでなく世界のいろいろな問題に関心が向くようになったのです。

 

(中田)「『表裏なくすべての人を幸せにする』という軸で経営判断をしてきたけれども、その判断の際に、アフリカの環境がどうだとか、貧困の子どもたちがどうだとかっていうことまでは考えていなかったんですよね。じゃあ、どういう判断で意思決定をしたらいいのか。もはや、自分の会社だけでできることじゃないですよね」。

 

こうした経緯を経て、夢びとが次に考えていることは、「壁のない社会をつくること」だと中田はいいます。

 

(中田)「組織の壁、各家庭の壁など、いろいろなところにある壁をなくしたオープンな場所を創りたい。世の中に山積する問題に対して僕らができることは限られているけれども、組織を超えて交じり合ったり協力したりする関係が生まれる場所を創れば、ひとりではできないこともできると思うんですよね」。

 

そんな思いから、2018年4月、弊社事務所が入るビルの最上階にオープンした学び場が「とびら」です。とびらは、「本物に出逢う」「生き方、働き方について考えてみる」「自ら、仲間と一緒にやってみる」の3つを大切に、一緒に作り上げていくオープンスペースです。

 

オープン前の内装工事も、みんなで協働作業!2018年3月23~25日、「とびら」にて

(中田)「僕がこれまで出逢ってきた『いい会社』やNPOにも混じってもらって、何らかの協働が生まれたり、生きることや働くことに対してやりにくさを感じている人が、新しい価値観との出逢いによって課題をクリアする方法を見出したり。『とびら』は、集まった人たちの可能性を開く場所にしていきたいと思っています。これからどんなことが起こるのか楽しみです」。

 

夢びとは、夢を描く人を応援し続けていく、共創パートナー。
ともに人生の可能性を開いていきましょう。

 

(取材実施2018年2月22日、取材・文  PRリンク 立藤慶子)